+閉
私の「高里くん」の印象はやはり『魔性の子』が強いです。
静かで冷たい空気感。
ただ今回は思ったより暗い印象はありませんでした。
人はたくさん死ぬんですが、
以前読んだ時よりその辺りの共感性が鈍くなっているようです。
小野不由美先生ですし。
そりゃ死ぬよね。
それよりも気になるのは、
何故に1冊目がこの『魔性の子』なのかという事。
どう考えても『十二国記』の設定が、
事細かに出来上がっていないと書けないはずなのに、
何故にその舞台が現代日本なのか。
膨大な設定があるはずなのにその片鱗しか見せず、
結局『魔性の子』では作り込まれた異世界は登場しません。
本編がないのにスピンオフから書き始めた感。
その辺りが『魔性の子』から読み始めた人が、
どういう受け止め方をするのか気になるところでもあります。
単語の意味とか分からないままなのではないかと。
どうなんでしょう。
読めば読むほどこの裏にどのれほど膨大な物語があるのか、
ちょっと考えただけでゾッとします。
登場人物がばたばたと死んでいくのが気にならないのも、
そのせいかもしれません。
人が死ぬ事以外のところに意識がもっていかれているというか。
高里くんが記憶を取り戻していく過程が好きです。
連想ゲームのように言葉を繋いで、
少しずつ、少しずつ、泰麒を取り戻していく。
『十二国記』の主役は泰麒だと聞いた事があります。
あまりピンときていなかったのですが、
だからこそ『魔性の子』が1冊目だったのだと、
今となっては思います。
最初から泰麒を描くために全てが存在しているのだと。
+閉
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