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巻ごとにそれぞれ独立しているので、
本来どこから読んでも構わないはずなのですが、
「この異世界についてのチュートリアル」があるのが、
陽子が登場する巻です。
『月の影 影の海』『風の万里 黎明の空』それぞれ上下巻。
陽子が学ぶのと一緒に読者も学ぶ事になるので、
やはりここを軸に読むべきか。
延王が登極の頃の話『東の海神 西の滄海』と、
恭王登極の話『図南の翼』は番外編とされていますが、
時代が前後するというだけで、
シリーズとして読んで構わないと思っています。
シリーズとしては2作目である、
『風の海 迷宮の岸』の上下巻が泰麒の話で、
冒頭から『魔性の子』の文章をそのまま引用して、
あちらとこちらの場面を描きます。
これで分かるのが『魔性の子』が書かれた時点で、
『風の海 迷宮の岸』の物語がほぼ完成していたであろう事。
そして『黄昏の岸 暁の天』で現在の泰麒が描かれます。
『魔性の子』でほぼホラーのように描かれていた、
怪異の正体がここで分かる、という意味の分からなさ。
小野先生の頭の中はどうなっているんでしょう……
(※最大級に褒めてます)
『十二国記』がシリーズ化された時、
泰麒がこのシリーズの主役であるはずなのに、
何故1作目が陽子が主役の『月の影 影の海』だったのか、
そもそも陽子主軸の話が必要だったのか? という疑問が、
この『黄昏の岸 暁の天』に集約されています。
『十二国記』は確かに泰麒の物語であって、
陽子は「泰麒を助けるため」に必要な存在だった。
本当にそれだけなのだな、という気がします。
泰麒を蓬莱から連れ戻すために陽子の存在が必要で、
その存在に説得力を持たせるための伏線が、
『月の影 影の海』『風の万里 黎明の空』だった。
『東の海神 西の滄海』と『図南の翼』が、
番外編とされているように、
この2人の王は本編で主役に立つ事がありません。
現在の時間軸では立派に成長を遂げた、
信頼の出来る王として陽子たちを助ける側にいる。
それに対して陽子は成長していく過程で、
それを読者も見守っていたのだから、
もう少し見守らせて欲しいと思うのですが……
陽子主役の長編はもうないのかな。
陽子贔屓の身としてはちょっと寂しい。
先に『華胥の幽夢』から読んでしまったので、
伏線を逆に辿る事となりました。
むしろ逆に辿ったからこそ、分かる伏線もあったかも知れません。
一瞬だけ登場する采王黄姑の名前を、
それだけで覚えていられる自信がないので……
『黄昏の岸 暁の天』の上巻で泰麒が出掛けた間の事が、
「冬栄」で描かれていますが。
「冬栄」の可愛らしい物語の裏側で、
何が起こっていたのかを考えると辛いものがあります。
そして私は今の所きっと驍宗様があまり好きではないので、
戴国の政治的な話はあまり面白くない。
新刊は戴国の話だという噂なので、
驍宗様の印象が覆ってくれる事を期待しています。
『華胥の幽夢』の後に、
『丕緒の鳥』という短編がありますが、
そこから先が未読なので楽しみでもあり怖いようでもあり。
特にその後に続く新刊4冊は発行までかなり年数に間があるので、
同じ様に読めるのかという不安が少しあります。
小野先生の作風があまり変わっていない事を祈ります。
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