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シリーズを全て読み返した事により、
覚えていなかった伏線が全て回収されて、
前回読んだ時とはかなり印象が変わりました。
特に「冬栄」は阿選の名前が不穏でしかありません。
こんなに良い人だったのに!
懐いている泰麒が不憫なくらい。
それぞれの登場人物の為人や泰麒との関係性も見えて、
何とも言えないものがあります。
この裏で行われていた事を思うと、
驍宗様「飢えた虎」だと評された意味もまた違ってみえます。
「乗月」は『風の万里 黎明の空』の後日譚になるでしょうか。
祥瓊の物語を念頭に置いて読むと、
祥瓊が月渓を名指しして文を書いた意味を思います。
桓魋が嬉しそうに陽子や祥瓊を語るのが嬉しく、
月渓に「祥瓊がこう言うから使者として来たのだ」と、
説明する場面がとても好きです。
「書簡」は陽子と楽俊の微笑ましい遣り取りが。
楽俊が陽子を拾った経緯や、
その過程での延王、延麒との関係性などが見えると、
楽俊の為人がより一層微笑ましかったり。
時期としては陽子が正式に登極する直前なので、
この後『風の万里 黎明の空』に繋がって、
陽子が置かれている状況が明らかになります。
最後に景麒が呼びに来た理由は、
なんだったのか分からず仕舞いですが、
朝廷が整わない中での陽子の苦労が滲みます。
玉葉さんはその後もずっと側にいるのだろうか?
「華胥」は前回読んだ時に、
この短編だけではシリーズにどう関わり合いがあるのか、
分からなかった話でした。
『風の万里 黎明の空』を読んだからこそ、
最後の最後にこの人が、
鈴を助けてくれた采王黄姑だと分かる仕掛けだったのだな、と。
でも采麟はまだこの時点で黄姑様を王とは選んでいません。
こんなにすぐ近くにいたのに。
王気がどう定るのかは謎が多いです。
「帰山」も前回は利広と宗王一家が、
『図南の翼』ですでに登場していた事を覚えておらず。
「恭に寄って声をかけておいた」という場面で、
王族同士はそんな気安い関係だろうかと思っていたのですが、
知っていて読めばは90年経っても珠晶と仲良しなのかと、
微笑ましいばかり。
『風の万里 黎明の空』で柳への視察を止められていた延王が、
結局自ら様子を見に来ているあたり、
延王の奔放さなのか、柳の危うさなのか。
柳については分からない事が多いままなので、
いずれ舞台とならないかと期待。
麒麟もまだ出てきませんし。
『華胥の幽夢』で回収されていた伏線を、
逆に伏線としてシリーズを読み返す事になり、
改めて伏線を回収する、という不思議な体験をしました。
持っている情報によっていくらでも表情が変わるのは、
作り込まれた世界観のお陰でしょうか。
私が知っている『十二国記』はここまでなので、
ここから先は道の世界が広がります。
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